染色関連知識

加賀友禅は染色技法のことですが、伝統の技の中に、実は科学的な裏付けもあります。 こちらでは、絹への染色に関わるちょっと化学的、科学的な情報として、絹のはなし染料のはなし色のはなしをご紹介いたします。

絹のはなし

絹は、保管さえよければ、100年、200年と生き続けます。合繊と違って、劣化をしないことが特徴です。 夢の繊維が多く開発されましたが、肌触り、絹の光沢、吸湿性(保温)の点では、絹は今でも繊維の王様です。

また、縮緬の技術は、一越、三越、変り無地と進化してきました。現在の変り無地縮緬のしなやかさは、 日本国産の最高級品であり、伝統の職人にしか織れないと伺っています。

絹の特質
絹の繊維は、分子量が一万から数百万程になる高分子化合物であり、20種類程のアミノ酸からできている タンパク質です。
生糸は蚕が首をふりながら吐糸するため、このアミノ酸分子が整然と配列したり、不規則に重合している部分が 作られます。
これが「絹光沢」の秘密であり、絹の持つ優れた吸湿性や保湿性を生み出しています。
生糸
生糸は蚕の繭から採った長い繊維です。それは一個の繭につき約1,00m~1,500mもの長さに達し、 太さは約2~3.5デニール(生糸の糸の長さ9,000mで重さ1gの時の太さを1とする太さを示す単位)という 極めて細いものです。
縮緬
縮緬イメージ 縮緬(ちりめん)とは絹織物のことで、織物には縦糸(たていと)と緯糸(よこいと)がありますが、 縮緬の場合、一般には縦糸に撚りのない生糸をそのまま数本合わせた糸を用い、緯糸には通常21デニールの 太さの生糸を数本程合わせ、左と右に強く(1mの間に2,500~3,500回)撚りをかけた糸を使います。

染料のはなし

染色とは、染料を使って染色することが本義です。

染料と顔料
染料イメージ 絵具や印刷インキ、塗料等はすべて顔料といい、接着剤により何かに付着もしくは混合されて着色されます。
一方、染料は絹などの繊維の分子の中に入り込んで化学的に吸着し、水洗の後は染色された繊維のみとなります。
絹繊維との結合
絹の分子は染料の分子に比べるてはるかに長く、繊維の分子の不規則な配列の部分の特定の端々に染料の分子が 結びつきます。その結ばれ方は、(1)静電気的な引力、(2)分子間に働く電磁的な引力、(3)配位結合とか共有結合 といった比較的堅い結合であり、いずれにしても原子、分子による化学的結合です。
友禅染色の技術
本来、染色繊維への染着現象は、人間の手で自由にコントロールできません。
しかし、友禅では均染性が必要なので、染料が生地等の表面に均一に分散するまで、糊や豆汁、緩染剤などで、 染料の分子と繊維の端が結ばれるのを、しばらくの間、意地悪をするのです。
友禅の技術は、これらの助剤の助けを借りながらも、彩色は筆または小刷毛を使い、引き染には大きな刷毛を使って、 神わざの如く染料溶液を均一に塗っていきます。
決して機械ではなく、手によって均一に塗る職人の技。 ここに加賀友禅染の染色や地色のまろやかな風合いの秘密のひとつがあります。

色のはなし

色の認識
色認識イメージ 染料を色素ともいいますが、染料の中には色があるわけではありません。実は、太陽の光線の中に色があり、 色素や物質の中の発色基がその光線の中の特定の振動数(波長)の光を吸収して、残りの光線を反射、それを眼が 捕えて、大脳が識別するのです。
色の違いを出す正体
原子は原子核と電子で構成されていますが、一番外側に位置する電子は比較的自由な電子で、原子や分子の 結合や化学反応の主人公となるものです。この電子が外部からの光エネルギー(光量子)等を吸収し、その軌道を より外側に移動します。
色があざやかであるということは、その物質の中に不安定な自由電子が多いのではないでしょうか。
色の文化
色認識イメージ 自然界の中にあって、色のあざやかなものは若々しく、みずみずしく、特別な状態である場合が多いようです。 そして、その特殊な状態が同時に、自然の中で合理性、必然性をも持っているようです。
この自然の中の色や形を人間が模倣し、生活の中に取り入れたことが色の文化です。 自然は色によって、私達に数多くのシグナルを送っています。
色の識別
私たちは、色に対してさまざまな感じ方をします。色の分類は、赤から紫までの色相とその彩やかさ(彩度)、 そして明るさ(明度)、でできていますが、人間が感じる色の種類は多く、その色には固有の名前がついています。 この固有名色は、動物・植物・鉱物の名前からとったものや、時代・場所・流行などからとったものがあり、 日本情緒豊かなものも数多くあります。
色がなくなるのは?
染着と逆の手順で、酸やアルカリ、あるいは還元剤と熱や水を加えると色がなくなります。 これを、脱色又は色抜きといいます。
また、繊維に含まれる水分などを少なくして、発色基の自由電子を不活性にしても色がなくなり、 これを色ヤケや色ハゲといいます。
逆に言えば、染色時の色を保つためには、絹に対して湿度(40%~80%)を常に維持する必要があります。